- 2024.11.18
- 第37回手話寺子屋オンライン講演会
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今回のにこ~るブログは、第37回手話寺子屋オンライン講演会についてお話いたします。
講演会のタイトルは「ろう者学~文化の違いを認識し、より深く理解するためには~」。講師は、ギャローデット大学ろう者学部教授のジーニー・ガーツ氏でした。講師がASL話者のため、ASL⇔JSLの手話通訳付きで講演会を開催いたしました。
講演では、Chuck Baird氏(※1)の絵画の話、デフ–セイム:ユニバーサルコネクション(お互いに「同じろう者である」と認識し、国を超えて親近感を持ったつながりや交流を持つ)について、ろう者のアイデンティティ・文化・異文化コミュニケーションについて、(国の)文化間の相違について、言語イデオロギー・国際手話(※2)について、ハイ/ローコンテクスト文化(※3)について、異文化コンピテンス(※4)についてお話しいただきました。
講演会開催日が、9月23日の「手話言語の国際デー」だったこともあり、手話言語国際デーについても少し触れられていました。
(※1)Chuck Baird(チャック・ベアード)…アメリカのろう者のアーティスト。Chuck Baird Art Gallery | Museum Of Deaf History, Arts & Culture | Kansas(英文) https://www.museumofdeaf.org/chuck-baird-art-gallery
(※2)国際手話…国際交流の場で使われているのが手話の共通語である「国際手話」です。国際手話はいろいろな国の人にとってわかりやすい身振りや表現で作られています。国際手話は、聴覚障害者(ろう者)の世界的な交流の場である「世界ろう者会議」や、国際的なろう者のスポーツ大会である「デフリンピック」などで公用語として使われています。(世界をつなぐ手話 – 東京都福祉局 より 原文ママ
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/koho/sekaiwotunagusyuwa.files/gaikokunosyuwa.pdf)
(※3)・ハイコンテクスト…コミュニケーションや意思疎通を図るときの言語や価値観、考え方等が非常に近い状態のこと(中略)具体的には、「空気を読む」というように前提の知識や暗黙の了解がお互いに理解できているからこそ可能なコミュニケーションスタイルのこと。
・ローコンテクスト…知識やカルチャーの理解がなくても分かる、シンプルで明快なコミュニケーション方法(中略)コンテクスト(文脈)に頼らずはっきり言葉にするコミュニケーションスタイルのこと。
(ローコンテクストとは?メリットとハイコンテクストとの違いを併せて解説! – design-shimbun)
(※4)異文化コンピテンス…異文化間能力(Intercultural competence)とは、異なる文化背景を持つ人々と適切で効果的なコミュニケーションを取るために必要な能力 「異文化間能力」とは –異文化交流に必要な能力の解説– https://newspicks.com/news/8152767/body/
ろう者の国際交流において、文化意識(他の国の考えや価値観について知る)、文化感受性(お互いに違うという事を頭に入れつつ、大切なことは何かを考え、相手の考えを学び取り入れる)、文化能力(前項二つを踏まえて、相手に合わせたコミュニケーションを取る)の3つを持っていることが重要だとお話していました。これらは、心を開いたコミュニケーションを通じて、沢山の経験をしていく事で身につけていく必要があるとのことでした。
「同じろう者である」という国境を越えた共通点があっても、文化的に深い部分の違いがあるということをお互いに理解する必要があり、また、異文化コンピテンスが重要であるという考え方は、国際的な交流や、ろう者/聴者間だけでなく、年齢や属性等の違いから起こるコミュニケーションのズレに対しても応用できそうな考え方ではないでしょうか。
2025年の11月には東京でデフリンピックが開催されます。選手だけでなく応援する人も含め、世界中からろう者が来日されます。今回の講演会では、あまり馴染みのない言葉もあったかと思いますが、ブログで注に挙げた言葉だけでも覚えていただき、異文化交流の際にお役立ていただければ幸いです。
第37回講演会にご参加くださいまして、ありがとうございました。第38回講演会、現在お申込み受付中です(2025年1月15日(水)締め切り)。
今回はトークショーを行ないます。皆様のお申し込みをお待ちしております。